バラバラに、ともに。遠藤まめたのブログ

LGBTの子ども・若者支援に取り組む30代トランスの雑記帳です

橋本愛さんのコラム/対立ではなく共闘を

文春に掲載された橋本愛さんのコラムが話題になっている。

bunshun.jp

橋本さんは先日、トランスジェンダーに関連するSNSの投稿を撤回・謝罪して話題になった。「学びの機会をくださり、本当にありがとうございます」と投稿したのが3月15日で、この半月の間にかなり勉強されたのだろう。

文春のコラムでは、LGBT理解増進法ができたら女湯が危険に〜という言説が事実に基づいていないこと、そもそもトランスの人たちがどのような日常生活を送っているのか、といったことに言及されている。

トランスの約半数が性被害経験があることにも触れられていた。よく短時間でこんなに学ばれたものだと驚いた。そう、トランスの権利擁護を行う人が性犯罪に無関心だというのはよくある誤解である(トランスは性犯罪にあっても相談窓口でも無理解にさらされる脆弱な集団であり、そこにつけ込む加害者もいる・・)。

trans101.jp

対立ではなく共闘を

コラムの中で、橋本さんは次のように書いている。

「不平等な社会構造を変えるために、互いの権利を保障するために、私たちは対立するのではなく、共闘すべきではないだろうか」

これは本当にその通りだなと思って、女優を生業にしている方から「共闘」という言葉が飛び出してきた意外性もあって、とても嬉しかった。

結論から言えば、「女性の権利とトランスの権利、どちらを犠牲にすべきか」などという問いを立てて、お互いの対立を煽っている人たちは、最初から女性の権利にもトランスの権利にも関心のない人間だ。数年前から言っているが、百田尚樹や山口敬之が「トランスを認めると女性の〜」と口にしている時点でおかしいのだ。トランスの話をするより前に、あなたがた、先にすることあるでしょう。

オールジェンダートイレと授乳室

先月、台湾に行く機会があった。台湾には、性別友善厠所(いわゆるオールジェンダートイレ)が広まってきている。性別友善厠所は見た目が典型男女じゃない人、子育て中の家族、障害者と異性介助者の組み合わせ、外見じゃわからない障害の人、コスプレイヤー、プライバシーのない男子トイレが嫌な人にやさしくて、女子トイレの長蛇の列問題も緩和するトイレだと説明がされている。

いろんなタイプがあるが、例えば下記はその一例。

入り口が扉でなくカーテンで、中に人がいるかわかりやすい。

 

こちらは座る個室

バリアフリーおよび子どもづれ個室

立つ用の個室もある。最初に見たときは衝撃だった。

 

私はトランスジェンダーの当事者で(当事者の中にもいろいろな人がいるが)男女でわかれたトイレが使いにくく感じるので、台湾での滞在中には不安が多少解消して助かった。

性別友善厠所をどう設置するかの研究も行われているようだ。各個室に緊急時の通報ボタンがあるとか、性別友善厠所の意義について説明をすることとか、いろんな議論があるっぽい。

ちなみに上記の建物では、異性と用を出したくない人は別の場所に男女別トイレがあった。普段トイレを探して歩いている私のようなタイプにとっては、これまでのトイレが良いという人も「あなたも歩いて探しましょう」という感じでよい。マイノリティばっか歩かされないのがいい。

気がついたのは授乳室もその辺にたくさんあること!駅やら観光名所やら、いろんなところに授乳室がたくさんある!ということは、日本ではこれまで授乳室が必要なのに困っていた人がたくさんいた、ということだ。

松山空港に着くと、オールジェンダートイレが早速出迎えてくれたが、この空港にはベビーやキッズ向けの設備も充実していることでも知られている。

授乳室も性別友善厠所も全然ない日本で、(トランスじゃない)女性とトランスの権利があたかも対立するものかのように極右に煽られていることの惨めさが身に染みた。

権利獲得はパイの奪い合いではないのに、なぜそのように信じてしまう人が多いのか。やっぱり権利についてきちんと学ぶ機会もないからかもしれない。

(*なお、トランスが全員性別友善厠所をつかうべしみたいな議論をしたい人はこれを読んでください。ここではそういう議論はしません)