バラバラに、ともに。遠藤まめたのブログ

LGBTの子ども・若者支援に取り組む30代トランスの雑記帳です

やっぱ愛ダホの活動を終えます

毎年5月17日の「多様な性にYESの日(IDAHOT)」にあわせて全国各地でキャンペーンを呼びかけてきた「やっぱ愛ダホ!idaho-net.」が来月で活動を終えることになりました。来週末に「やっぱ愛ダホ!」クロージングイベントを開催します。よかったらきてください。申込者にはアーカイブ配信もあります(期間限定)。

イベントの案内はこちら

以下、発起人による回想

2007年に「やっぱ愛ダホ!idaho-net」は、mixiで集めた「多様な性にYES」をテーマにしたメッセージをひたすら代わりに街で読み上げるという無謀なスタイルにより始まりました。このスタイルは当時20歳だった私が「駅前でアクションをしてみたいけど自分ではスピーチが考えつかない」から「集めちゃおう」と思って始めたもので、意外とウケてしまい、数年のうちに浜松や福岡、名古屋、神戸、仙台など様々なエリアに広がりました。

また「集めたメッセージの展示」は、顔出しが難しい地方都市のメンバーにもウケてしまい、メッセージ展は青森や山梨などで開催されてきました。

5月17日=LGBT嫌悪に反対する国際デーのアクション自体は2006年に尾辻かな子さんたちが中心で新宿で大々的に行われていたのですが、07年は尾辻さんが参院選に出馬してそれどころではないというので予定が空白になり、その空白のおかげで今日に至るという感じ。

akaboshiさんが私たちのアクションをYouTube配信してくれたのもでかいですね。

「メッセージ読むだけなら、うちでもできるやん」「20歳の子達がやってるなら、自分たちもできるでしょ」と各地の人に思ってもらえたんだと思います。3人いればできると称してたし、実際に3人いればできるアクションだったし。

楽しかったこと

ボランティアでマイクを回していくから「あの人誰だっけ」みたいな人が途中でマイクを握ってたり、知らない言語で何かを話して去っていく方がいたり(多分感動的を言ってくれていたんだと信じている)、距離を保ちながらじっとこちらをみている高校生が最後らへんでぐしゃぐしゃになった紙を渡してきて「いつか私も胸を張っていきたい」ってそこに書いてあったり、それをその子の前でマイクで読んだり、去年じっとみてたなぁって人が今年になってマイクで話す側になったり、感動的なことはたくさんありました。

途中ケンカした人もいたけど、去年仲直りしました。笑

毎年ずっと同じメッセージを寄せてくれている人もいたなぁ。

クローズの理由

「やっぱ愛ダホ」が担ってきた役割=地方でのLGBT運動の活性化が達成されたから、というのが主な理由です。2010年前後では東京や大阪、札幌、名古屋といった大都市では活動があっても地方都市でアクションをすることは今よりずっとハードルが高いと思われてました。「やっぱ愛ダホ」は「できるんじゃね」と思わせる役割を果たしてきたのですが、2023年現在では地方でのパレードやプライドイベントも珍しいものではなくなってきたので、「やっぱ愛ダホ」は組織としてのミッションを達成したのではと考えました。昨年ぐらいからクローズについて考えはじめ、これまで関わってきた方たちとも意見を交換し、解散の合意になりました(今後も5月17日にそれぞれの地域でIDAHOに合わせたアクションは続いていきます)。

これまでいろんな運動団体に関わってきたけれど「団体の役割を果たせたので解散する」という平和的なクローズをしたことがないので、ちょっと震えました。

ネット環境の変遷

クローズの背景には、2007年から比較してネットの状況が変わったこともあります。活動を始めたときにはLGBTQコミュニティへの注目度は低く、ある意味「荒らされにくい」状況だったからこそ知らない人にマイクを渡し、自分が共感しないメッセージであったとしても代わりに読んでいく関係が成立したのですが、20年代に同じことをしてくことが難しいだろうと判断しました。トランスヘイトの盛り上がりもそうですが、誰かが「宇多田ヒカルです」と言ったとしても正誤の判断のしようがないし、そもそも性善説で作られたアクションの設計自体が、今のインターネットには合わないと考えるようになってきました。表現の自由を保証するためにはSMSで二段階認証しないといけないのでは。でも、そこまでしたくないよね、などなど。表現の自由をベースにしたプラットフォーム型の運動は、注目されすぎない方がうまくいくのかもしんないですね。

最後に

私は20歳に新宿駅の街頭に立ったときからアクティビストになったと思っているし、「やっぱ愛ダホ」は自分の青春そのものなので、めちゃくちゃこのアクションには思い入れを持ってきました。今回、役割を終えてクローズするのは感慨深いし、関わってくれた人たちには本当に感謝しかないです。

36歳の自分が今後「集めたメッセージを全部読む」「知らない人にマイクを渡す」みたいな、いかにも若者が考えるような活動を再びやる日が来るかどうかはわかりませんが、運動ってああやってやるんだなって「やっぱ愛ダホ」を通じて学んだ気がします。

知らない人を信じて巻き込んでいって、リスクをとって自分の手でマイクを握り、ここにはいない誰かのことを思うこと。アクティビズムの中での最も美しい、たくさんの感動的な場面を一緒に作ってくれた仲間たち、本当にありがとうございました。