バラバラに、ともに。遠藤まめたのブログ

LGBTの子ども・若者支援に取り組む30代トランスの雑記帳です

ここにいることは最低で最強の抵抗

※死に関する話題を含みます。

 

昨日、イベント登壇直前に若い知り合いの訃報を耳にして泣きそうだった。病気だったという。イベント自体は完璧にこなした。実際に新刊について気心しれた仲間と語り合えるのはとてもうれしかった。悲しいことと、その他のいろんなことは同時に成り立ってしまう。 

以前にも似たような経験がある。このときは故人の母校である高校で教員研修をしなくてはならず、心が散々に乱れた(このときには自死だった)。宇佐美翔子さんが心配してついてきた。私は何事もなかったのように話を終えた。いかにもケロッとしている姿を見て「あーたは、いつも大丈夫なんだから」と見透かしたように翔子さんが言っていた。大丈夫に見えることと、大丈夫であることはもちろん別のことだ。いかにも翔子さんらしく、いかにも遠藤らしいエピソードだなという思い出。

『ミス・メジャー』という大好きな映画がある。80歳近いトランス女性のメジャーさんと、彼女をママと慕うトランスたちを描いたドキュメンタリー映画。みんなトランスであること、有色人種であることなどを理由に社会の中で散々な目にあっている。家族からもひどい目にあっている。そんな中、メジャーさんは大きな愛で彼女たちを迎え入れ、社会へのプロテストで娘たちを繋ぐ。このような最高の老人になりたいと私も思うが、悲しいことには、彼女の娘たちはママよりも先に若くして亡くなってしまうのだ。映画の最後にメジャーさんや、いろんなトランスの人たちが「I'm still fucking here」と言うシーンがある。ここにいることは最低で最強の抵抗。

冒頭の彼は、私が掲載された朝日新聞「ひと」欄の新聞記事の切り抜きをお守りのように持ち歩いていた。パスケースに入れているんだと最初にあった時話していた。さぞかし熱烈なファンなのかよと思いきや、初対面のテンションは普通だった(笑)。毎日新聞だと言うから、それは朝日新聞だよと訂正してあげた。

彼の夢は、自分の住んでいる街にLGBTの中高生の居場所を作ることだった。そのプロジェクトを代わりに実現することはできる。きっとこれからやる。

けれど、そこに彼がいないのでは、彼の夢が叶ったとは言えないね。