バラバラに、ともに。遠藤まめたのブログ

LGBTの子ども・若者支援に取り組む30代トランスの雑記帳です

私の勤務先に関する誤情報と、みなさまへのお願い

こんにちは、遠藤まめたです。LGBTQ支援に関する活動をしながら、平日は企業で働いております。

 

私の勤務先であるオンライン署名サイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)上でたちあがった署名キャンペーンについて「社員の遠藤が自分の気に入らないものを消している」といった、事実と異なる内容、根拠のない憶測がTwitter上で拡散されており、このところ困惑しています。拡散が始まった段階でTwitter上ですぐに反論できればよかったのですが、職場に関わることであり、確認が必要な部分もあるため説明が今となりました。その間にも中傷コメントが寄せられており、おそらく今後も続くであろうことを心より残念に思います。私個人の想いとして見解を出したいと思い、短くコメントさせていただきます(所属組織の見解ではありません)。

 

Change.org上で立ち上がった署名キャンペーンが利用規約コミュニティガイドラインに違反しているかどうかの審査や対応は日本チームとは別個に機能しているポリシー部が行なっており、日本のスタッフはそもそも権限を有しておりません。また当たり前のことですが、私が個人で発信していることと勤務先の運営方針は別物です。

私の勤務先や提供しているサービスについて様々なご意見や改善要望があることは承知しておりますが、根拠のない決めつけによって個人への誹謗中傷を行ったりデマを広めるようなことはお控えいただけると幸いです。サービスについて不明点などがあればヘルプセンターに問い合わせていただければ担当者より回答があります。また、私はChange.orgの幹部などと名指されていましたが、言われるような役職にもついておりません。

今後このような事実に基づかない情報の拡散は謹んでいただけると幸いです。

 

2021.2.10  遠藤まめた

「韓国のトランスヘイトの現状とその対抗策に学ぶ」レポート

先日開催されたオンラインイベント「韓国のトランスヘイトの現状とその対抗策に学ぶ」は、韓国からゲスト二名を招いた豪華な作りでありつつ定員が40名と少なく、参加したくてもできなかった人が多いようだった。そこで、主催者である「くまにじ」さんに許可をとり、簡単なメモをブログに掲載しようと思う。

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くまにじ主催のイベント

日本でこの数年広まりつつあるSNS上のトランスヘイトに関連した話題は少なく、どちらかといえば韓国のトランスジェンダーをめぐる運動の歴史や、法的位置付けについての説明が多かった。

韓国の性的マイノリティのコミュニティと運動

はじめにリュ・ミンヒさんより、韓国の性的マイノリティのコミュニティと運動についての紹介があった。リュさんは、この日のもうひとりのゲストであるパク・ハンヒさんと一緒に公益人権弁護士のグループ「希望をつくる法」(希望をつくる方法とのダブルミーニング)(http://www.hopeandlaw.org/)

内部のSOGI人権チームで働き、差別禁止法、トランスの性別変更、セクハラに関する憲法訴訟に関わっている。

リュさんはシスジェンダーレズビアンであることを公表している。トランスアライとしても弁護士としても、トランスジェンダーの人権擁護の話は重要だと考えてコミットメントをしてきたという。

 

リュさんの解説によれば、韓国の歴史において近代以前にもクィア的な存在はどこにでもた。朝鮮王朝実録にもレズビアンインターセックスの話が出てくる。日本の植民地時代にもクィアの存在が新聞で報道されているが、当時は病気として認識されていたようだ。1950年代になり都市化が進むにつれ、性的マイノリティの人たちのアイデンティティ形成の空間ができてくる。50年代、60年代になるとソウルには発展場ができていた。

1990年代以降、運動の組織化が行われていく。1993年には韓国初の性的マイノリティの人権団体である草同会(チョドンフェ)が誕生。1994年にはキリキリ(現レズビアン相談所)、チングサイができる。2000年にはクィアカルチャーフェスティバル(プライドパレード)がソウルで初開催。やがてパレードはソウルだけではなくて地方都市でも開催されるようになった。2001年からはレインボー映画祭もはじまっている。2007年には、差別禁止法案の差別禁止事由から性的指向を含む7項目を削除されたことをきっかけに、性的少数者反対レインボーアクションができた。

 

トランスジェンダーの存在が現れてくるのは2000年代である。2001年にトランスジェンダー の芸能人、ハリスがカミングアウトして可視化に大きく貢献した。ハリスはいまでも活躍している著名なタレントだ。2002年、2006年には、法的な性別変更に関する特別法が発議されるが通らず、現在も法整備がなされないまま現在にいたる。ただ、韓国には日本の性同一性障害特例法にあたるような法律はないが、2006年に大法院(日本の最高裁に相当する)で下された性別変更の判例が影響をもち、一定の要件を満たした場合に法的な性別変更ができることになった。2006年にはトランスジェンダーの団体チロンイが発足し、活動を展開していった。

韓国におけるトランスジェンダー の人権の現状

つぎにパク・ハンヒさんより韓国におけるトランスジェンダー の人権の現状について説明があった。パクさんも、前述の「希望のつくり方」所属の弁護士だ。トランス女性であることを公表しているが、現在3万人の弁護士がいる中で当事者であることを公表しているのは彼女ひとりだ。公表したのは2017年のこと。それだけ韓国社会においてトランスジェンダーが声をあげることが難しいのだ、とパクさんは語った。

 

トランスジェンダーの人権の現状としてパクさんがあげた特徴がいくつかある。

①不可視性

韓国ではトランスジェンダー 人口に関する統計がない。何人いるかわからない。性別変更についても2006年より裁判所で可能だが分類がないので人数を確認できない。国レベルでの実態調査を2020年に国家人権委員会(人権擁護機関)が行ったり、民間団体が独自に行なったりしているが不十分である。

 

②制度的差別

性別変更の要件が厳しく、法律がないため裁判所によって判断がわかれる。またSOGIに関する差別禁止法はない。

 

③ヘイトとスティグマ

宗教右派(保守プロテスタント)など極右団体による差別煽動が行われている。また急進的な人々による「トランス女性は女性ではない」とする排除言説もある。フェミニストを自称しているが、あの人たちがやっていることはフェミニズムとは関係ないとパクさんは考えている。トランスジェンダーについての人々の意識を尋ねた調査結果は2001年と2020年であまり変わっておらず、UCLAウィリアムズ研究所によるトランスジェンダー に対する国別の意識調査では、韓国は53点、日本は62点と、日本に比べても厳しい状況である。

韓国の法的な性別変更について

韓国の法的な性別変更について、日本の性同一性障害特例法に相当するような法律がない中で、裁判所に依存する形で行われてきたことの解説もなされた。

韓国では13桁の住民登録番号が住民登録証、運転免許証などに表記され、すべての行政・民間領域で身分証としてかならず使われる。この7番目の数字が性別をあらわしており、この住民登録番号をつかうことで性別が暴露されるためにトランスジェンダーの当事者の日常生活に困難が生じている。

1980年代より地方裁判所では性別変更を認める決定がなされていたが、2006年に前述の大法院における性別変更が認められたことにより、以降は同様の基準にもとづいて裁判所が性別変更を許可する形となっている。具体的には、日本の特例法で求められている非婚要件、子なし要件、手術要件に加えて、これは日本ではない要件であるが、前科や信用情報(借金がどれだけあるかなど)に関する情報などが求められる。手術要件についても(日本ではトランス男性の場合には陰茎形成は必須とはされていないが)韓国では必須である。法律がないため判事が恣意的に判断し、両親が性別変更についてどう考えているのか聞かれたり、外部生殖器の写真をだすように要求したり、セクハラ的な質問をされたり、問題が多い。

2011年には大法院にて、子どもがいるトランスジェンダーの性別変更が却下されている。

医療アクセスについて

医療アクセスについても課題が多い。ホルモンや手術療法は保険適用外となっており、当事者アンケートでは、法的性別訂正を行わない理由の58%が「性別適合関連の医療に費用がかかるため」とされている。医療機関は単なる金稼ぎ目的のためにトランスジェンダーを診ており、副作用に関する説明がなく手術したり、高圧的だったり、タメ語を使われたり、よくないレビューをネットにあげると裁判で訴えてきたりする。当事者たちは現在このような事例をあつめてメディアに情報提供し、態度を変えようとしている。

より一般な医療アクセスについても、医療従事者からの差別が怖くて病院にいきにくいと感じるトランスジェンダー当事者がいる。コロナ禍でも、医療受診をためらう当事者の事例などが報告されているそうだ。

差別をなくすために

韓国ではさまざまな項目を含む差別禁止法が2007年にはじめて議論されたが、今日にいたるまで制定できていない。立法されない理由としては保守がSOGIをいれることを拒んでいるから。政府とは独立して設置されている国家人権委員会では性的指向にもとづく差別禁止を決めたが、2016年には性的指向を外すことをめざした改悪発議が行われた。改悪に反対するために人々が声をあげて、結果として改悪はされなかったが、そのあとも改悪の試みがなされている。

LGBTに反対しているキリスト教右派団体は「差別禁止法ができると女湯に男が入ってくる」「手術をしてないトランス女が女子トイレで性暴力をふるう」などのマンガをのせたリーフレットを配布している。Twitterを中心に「女性の安全」のために排他的な主張をする人たちがいるが主流派ではなく、メインストリームのフェミニストたちはトランスジェンダーと連帯している。

2021年現在は、さまざまなトランスジェンダーの団体がうまれている。女性、労働、障害者の運動との連帯を表明し、難民支援、兵役拒否者の問題と語り合うなど、さまざまなアジェンダでのつながりが生まれつつある。

ツイッターでのトランス排除言説は一部にすぎず、主流派でもないが、若い人たちが傷つかないようにしなくてはいけないとパクさんは語った。

2020年には淑明女子大学事件がおきた。性別適合手術を受けたトランス女性が合格したが、一部学生が差別煽動のポスターを張り出した。彼女を応援して、差別ポスターの上から「連帯します」「がんばってください」などのポストイットを貼る学生たちもいたが、入学した際の差別に耐えられないと考えて、その学生は入学を断念せざるをえなかった。これはターフの差別煽動が露骨に現れた事件といえるだろう。また2020年には性別適合手術を受けたトランス女性のピョン・ヒスが、心身に障害があるとし、軍人として不適合として強制退役させられた事件があった。その後、遺体で見つかるという悲劇となった。

 

リュさんは「韓国からよくないニュースが届くかもしれないが、いい未来を作ろうとしてることを知ってほしい。これからもお互いがお互いの力になりたい」と語った。

 

まとめ

 

以下は遠藤による感想だが、日本と韓国の運動は共通点が多いように感じた。LGBTの運動が90年代に盛り上がり、性別変更の要件についても韓国は日本の特例法から影響を受ける部分が多いなど、他の国々と比べても親近感を抱いた。韓国で今後、差別禁止法がとおれば、それが日本に与えるポジティブな影響があるだろう。

その一方、やはり違う部分もある。日本では少数ながら大学病院が性別適合手術を行なっており、韓国ほど医療資源は乏しくない。逆に韓国には政府独立機関である国家人権委員会が存在するが、日本の裁判所の人権感覚には疑問が残る。韓国は市民の力によって民主化を勝ち取り、政権交代も頻繁にある国なので、その点は日本の市民としてはうらやましい。

トランスヘイトを行う人々についてパクさんが主流ではないと話したのも重要であると感じた。トランスジェンダーも女性たちもともに家父長制によって抑圧され、性差別や性暴力に苦しむ者同士であり、共闘してきた歴史を持つ。SNSではどうしても過激な言説ばかりが目立つが、連帯している姿をみせつづけていくことが重要である。

Twitterの一括ブロック機能を使ってみた

*8月30日、リライトしました。

 数年前からTwitter上ではトランスヘイト言説が激化しています。

この間、引用RTで絡んでくるアカウントが多く、それをみてメンタルヘルスを害しているユースたちがいることをわかっていて、ずっと悩んでいました。

そこで、特定のアカウントをフォローしている人などを対象として、一括ツールでブロックすることにしました。

単にクソリプの相手をしないとか、そういう次元では、フォロワーのメンタルヘルスに与える影響をふせげないと判断しました。

このブログを書いたのは「なにも悪いことをしてないのに突然私にブロックされて気を悪くしてしまった人がいたら申し訳ないから」です。一応説明しておくと事情はこんなところです。巻き添えをくらったときには、あなたや私のせいではなくTwitterの仕様のせいだと理解してもらえたらありがたいです。

(フォローしている人のリストなどに、おそらく原因があると思われます)。

 

 

 

 

 

入院時の対応でよかったこと

終わった今となればずいぶん前のことのように思えるが、先月入院して手術を受けた。

書こうか迷ったが、たぶん参考にしてくれる人もいるだろうから記録として残しておこう。

問題が発覚した理由

トランス男性はなかなか婦人科にいきにくいよね、ということで昨秋にこういうイベントを仲間たちと企画した。ZOOMで画面オフでもOK。参加費は無料。

婦人科医から健康にかんするレクチャーを受けられて、質疑応答もできるという企画だ。

lgbtcath.com

過去に同様のイベントをオフラインで開催したこともあるが、オンラインのほうが便利だというのもあり、100人近くの申し込みがあった。

イベント後、せっかくだからとゲストの吉野先生のクリニックを受診したところ10センチ規模の子宮筋腫がふたつ見つかってしまった。苦笑

正確に言えば、以前から筋腫の存在は認識していたのだが、放置していたので育ってしまっていた。妊娠出産を希望している人ならともかく、手術で全部取るのがいいのだろうな、という結論がここで出た。

地元の大学病院へ

自分は免疫系の難病(寛解中だけどな)をわずらっているので定期的に大学病院に通っている。そこで相談をし、病院内の婦人科を受診することにした。コロナ禍なので手術のスケジュールまで少し時間がかかったが、トランスだという話や出産希望してないことなどを告げて、スムーズに話が進んだ。

  • 検査方法について:内診は希望しないということで、肛門エコーと腹部エコー、MRIなどで手術当日まで乗り切った。人によって調べる項目はいろいろあるだろうから、みんなが希望すればそうなるかは不明だが、自分にとっては助かった。
  • どこまで取るか:今後の生き方次第で、卵巣まで取るのか確認してもらえた
  • 病棟:婦人科病棟だとしんどいだろうから男女混合病棟でベッド確保してくれた
  • 個室:可能なら個室、厳しくても男性の大部屋という方針で対応してくれた。差額はかからず
  • レンタルパジャマなど:今回はピンクを免れた

筋腫がでかいので開腹となったけど、幸い痛みもほとんどなく無事に終わった。

困ったのはヒマすぎてどうしようもなかったことぐらいだった。

さいごに

担当してくれた医療関係のみなさんはLGBTについてすごく知識があるという感じではなかったけど、改名や戸籍の性別変更について興味があっていろいろ質問してくれたり、とてもフラットだった。

もともとの持病のほうでかかっている主治医のほうも、木村映里さんの「医療の外れで」を最近読んでいて、いろいろ考えちゃった、みたいなことを話してくれた。

こういうコミュニケーションができる患者と医療関係者の関係って、全国的にはまだまだ全然ないだろう。自分はラッキーなんだと思うので、こういうのが当たり前になることを願う。

 

最後に去年のイベントのときに作ったクイズを置いておきます。

quiz-maker.site

 

トランスとスポーツをめぐる話

今回の東京五輪は、トランスをカミングアウトした選手が出場するというので、トランスとスポーツをめぐる話に焦点があたっている。

トランス女性が女性競技に出るのは体格差などを考慮しない、公平さにかけるのではないかという議論もあった。今回出場した中ではNZの重量挙げ競技に出たハバード選手に注目(および批判)が集まったが、ハバードはあっけなく敗退した。会場を笑顔で去り、感謝を伝える礼儀ただしい姿が印象的だった。

試合をあとから映像で見た。ハバードのあとにでてきたUSAの選手のガタイもすごくよかったし(ハバードの外見を批判していた人は、この選手の写真を見たらなんというのだろうか)、体格の小さなアジア系の選手がとんでもない重さを軽々と持ち上げていた。これまで興味を持つことのなかった競技だが、意外と面白かった。

競技参加をめぐって

「トランス女子が全部のメダルをかっさらい、女子スポーツを終わらせる」という恐れを口に出す人たちがいる。「海外ではすでにそのようになっている」と言い広めている人がいて、真偽を確かめずに信じる人もいる。

過去10年以上にわたりスポーツでは、どういう基準があれば公正性が担保されるか、インクルージョンをどう果たすかの議論がされてきた。専門家たちの知見も重ねられている。2021年現在におけるスポーツ科学の知見がすべてだとは思わないが、それなりに科学的な判断がされていて、結果としてトランス女子は結構シス女子には負けている。

アメリカの状況は、この記事にも詳しい。

front-row.jp

ハバードがあっけなく負けたことは「生物学的事実」とやらを強調する人たちの目にはどう映るのだろうか。Twitterをながめていたら、こんなツイートをする人がいた。

「トランスの選手は勝利すると袋だたきにされ、負けるとどうしようもないアスリートだと思われる」

アドバンテージがあるはずなのに負けたのだから例外的にどうしようもないアスリートなのだ、という判断をされる可能性が高い、ということだろうか。例外処理してしまえば、トランスアスリート脅威論(メダルをすべてさらってしまう)はこれからも維持され、競技から排除すべきだと主張し続けることができるのだろう。

そのような立場からみれば、ホルモン値などの制限をつけた上でトランス女子とシス女子で意味のある試合が成り立つという結論には、やはり到達しないだろう。

切符を手に入れること

ハバードの笑顔で考えさせられたこともある。

思い出したのは先月みたテキサス州のトランス男子が出てくるドキュメンタリー。彼は女子競技にずっと出させられていて連戦連勝しても全然嬉しくなさそうだった。

それが男子競技に出られるように認められ、はじめて試合で負けて悔し泣きした。そのあと試合で勝ち、結局男子競技でも何位かで表彰された。

あの男子競技で負けたときの悔し泣きと、はじめてスポーツやれた喜びみたいな入り混じった表情、ことばには簡単にあらわせない、胸をつき動かされるものがあった。

このドキュメンタリー

www.youtube.com

トランス男子の彼氏をずっとサポートしてきた彼女も試合を観に来ていて、号泣。

めっちゃかっこよかった。

トランスの選手をあれこれ中傷し、スポーツに参加しようとする理由をねじまげて捉えようとする人たちがいる。勝つためにトランスするんだろうとか。

でもそういう低次元の話をしていない。

トランスのアスリートの人生は複雑だ。子どもの頃からその競技を続けてきて、強い選手であればあるほど周りみんなに知られて、プロアスリートになればファンも出てくる。性別移行を秘密でやるなんて人生の選択肢はなくなる。競技と性別、おだやかな暮らしを天秤にかけざるをえない。アスリートのトランスの多くが「競技を引退したあとにしか性別移行できない」と語っているのが事実である。

それでもスポーツが好きでスポーツがやりたいと思っている人たちがいること、単純にすごいパワーだなとも思う。

 

*トランスとスポーツの経験については、先日友人の河津レナさんにこちらの動画も翻訳してもらった。とてもいいビデオなのでぜひみてほしい。

www.youtube.com

 

 

「休めっていうけど、休んだら差別なくならないじゃん」へのひとつの回答

TPATH(Transgender Professional Association for Transgender Health)というトランスが集まってトランスのヘルスケアを語るグループのカンファレンスに週末参加した。国際会議だが、例に漏れずcovid-19のためにオンライン開催である。
 
先日はオランダ大使館から交換留学プログラムの案内がきて喜んだが、内容はZOOMのミーティングだった。オランダの現地にいってチーズを食べることができず落胆したが、手軽にコミュニケーションがとれるのはいい。TPATHの会議もZOOMの機能をつかって英語、フランス語などの通訳が選べたし、情報保障で字幕がついたり、スライドや動画をアップロードしてくれた人がいたおかげで時差があっても追いつくことができたり、むしろ多様性に配慮した内容となっていた。Twitterの #TPATH2021というハッシュタグで、議論のサマリーもおえる。知的インプットをするにはオンラインで十分かもしれない。
 
その中でセルフケアについてのセッションが面白かった。アクティビストの燃え尽きには参考になるかも。
以下は私の英語理解なので違ってる可能性があるけど、こんなかんじ。
 
セルフケアして、結局元の場所にもどされるの?
 
セルフケアのイメージは西洋中心主義的で、極度に個人主義的じゃないのかという問題提起をしている人たちがいた。
 
「自分と向き合って回復して、また元のコミュニティで戦力として働きましょう。セルフケアにはこの商品を買おう。あのセルフケアはもう試してみた?(資本主義)」という枠組み自体が、なんかおかしくないか?
なんで元のコミュニティはそのままなの?そこにかえらなきゃいけないの?
しんどくなるのは個人的な問題なの?
セルフケアしようにも、この場を離れたところで差別無くならないし、助けを求めてる人はそのまま。子育てしてる人はそもそも時間も取れない。職場ならともかく家事や育児はどうすんの。ジェンダーのこと考えてなくない?セルフケアしようにもできない構造があるよ!と。
 
個人主義を超えたケアを模索しよう
 
そこで提示されていたモデルがself soothing(気晴らし)とself care(個人が地に足ついて意味と繋がりなおすこと)に加えて以下の二つ。
 
元ネタはこれっぽい

community care

(ケアさせてくれない世の中のシステムから一歩ぬけだす。子ども/おとな食堂みたいなのに関わったり、子育てしてるとセルフケアしにくいからコミュニティでの子育てにアクセスしてみるとか)

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イラストの出典は上記サイトから
 
stracture care
(さまざまなケアを可能とする構造に変える)

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トランスの場合だったら、トランスのスポーツ・サークルを作ってみるとか、コミュニティでご飯食べる会をやるのがcommunity careで、stracture careは近くのジムがトランスインクルージブになるよう働きかけるのが例としてあがってた。
 
別に個人でヨガをやってもいいし、ポテチを一袋気晴らしに食べてもOKなんだけど、おきている問題に対して個人的アプローチでケアをしようとすることだけが答えではないし、なんでも個人的に捉えようとするのは西洋中心的な個人主義の弊害っぽいかも、というお話でした。
なかなか面白かった。

オキュラスクエスト買って良かった話

たまには雑談を。免疫抑制剤のんでる上に日焼けもできないので、この夏は気分転換のしようもないな。ということでVRストリートビューつかって海外をみていた。TVは見ないし、Twitterのタイムラインは五輪で荒れているし。

オキュラスクエスト2で、wanderというアプリを使っているのだが飽きない。

日本の山小屋は見つけやすいように屋根が赤いけど、モンブランの山小屋は宇宙船みたいにメタリックであることがわかった。モンブランに登ることはないだろうから得をした気分になった。Googleのレビューをみてたら水が出ないのに蛇口がついていて、なんのためにこれはあるのだと客が戸惑っていて笑った。

怖いもの見たさでヨーロッパの骸骨教会をまわったが、骸骨教会やカタコンベの背景に土葬文化と、土葬による環境汚染や土地不足の問題があることがわかってこれも勉強になった。

中学校で地理や世界史の勉強に組み合わせたらとても面白いと思う。パンデミック中に買ったものの中で、オキュラスクエスト2はベストだったな。